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Dleague LOOKINSIDE 2016
第83回 ― 帰ってきた“絶対王者”オールディーズに死角はあるか ―
27年度秋季大会に於いて全ての試合で二桁差を着ける圧倒的な強さを見せつけ5戦全勝で大会を制覇、2年ぶり通算11回目の優勝を飾り正に彼等の“定位置”とも言えるDリーグチャンピオンの座に舞い戻ってきたオールディーズ。今回は彼らの栄光への軌跡を丁寧に振り返るとともに「リーグ史上最強」、「異次元の強さ」との声も聞こえてくるチームの残した様々な部門の数値や戦い方から戦力を分析、彼らの“強さ”の源泉を一つ一つ解き明かしていくと共に次期大会への課題を一緒に探っていく事にしよう。
【表1】大会成績:5勝0敗 勝点15 最終順位:優勝(通算11回)
キングサンズ | セガ | ブッダ | FF | ネオクラゲ |
○62-36 | ○64-45 | ○78-48 | 〇68-49 | 〇55-39 |
【表2】 各主要部門平均チームスタッツ
得点 | リバウンド | アシスト | スティール | 3P |
65.4(1) | 27.8(1) | 11.0(2) | 7.8 (1) | 2.8(2) |
失点 | 被リバウンド | 被アシスト | 被スティール | 被3P |
43.4(1) | 22.4(4) | 7.0(1) | 5.8(4) | 1.8(1) |
+22.0 | +5.4 | +4.0 | +2.0 | +1.0 |
【表3】 各部門スタッツリーダー(総数)
得点 | リバウンド | アシスト | スティール | 3P |
HC荒井(62P) | キケロ武田(34本) | CBしん(16本) | MP遠藤(9本) | BG三寺(5本) |
MP遠藤(62P) | MD浅田(26本) | MP遠藤(10本) | HC荒井(7本) | MP遠藤(4本) |
スワン佐々木(43P) | BG三寺(24本) | スワン佐々木(6本) | 三寺、浅田(各6本) | スワン佐々木(3本) |
まずは【表1】の大会成績から前回大会での彼らの優勝への道程を確認してみることにしよう。10月31日に行われた大会初日、−数年前は熾烈な優勝争いを繰り広げていた“かつてのライバル”、キングサンズを試合開始直後から圧倒、そのまま62-36と大差をつけて切って落とすと返す刀で続いて行われたセガ戦も危なげない試合運びで64-45で快勝、目標である「覇権奪回」に向けて順調な滑り出し見せたチームは大会2日目の11月14日、「王座に返り咲く為には絶対に負けられない戦い」“第一の関門”と目されていたここ数年飛躍的に戦力を向上、優勝候補の一角に挙げられ同じくここまで2連勝と悲願の初優勝を向けスタートダッシュに成功した「新興勢力」ブッダとの大一番を迎える・・・ −僅差での鬩ぎあいが予想されていた・・・いや、むしろ春季大会でブッダに46-55と完敗したのをはじめ2勝3敗と負け越し、2年間王座から遠ざかり緩やかな下降曲線を辿っているように映る“落日の王者”より“若さと勢い”のあるブッダが優位では・・・との声も聞こえていた試合はいざ蓋を開けてみると王座返り咲きへの執念、そして前回対戦での喫した敗北へのリベンジ・・・勝利への、そして覇権奪回への“強い想い”をこの試合にぶつけてきたオールディーズが −まるで獲物を狙う猛獣の如く−ティップオフと同時にイエロー&グリーンのジャージーを身に纏った若者達を強襲、瞬く間にブッダを混乱に陥れ試合を通じて攻守に圧倒、78-48と実に30点差を付け3連勝、一躍リーグ戦の優勝争いのトップに浮上するとチームはいよいよ2年ぶりのリーグ制覇への“最後の難関”とも言える11月23日の大会最終日の同じくここまで3連勝と勝星を伸ばしてきた“リーグ4連覇を目指すディフェンディングチャンピオン、ファイブファールズとの決戦を迎えることになる・・・
覇権奪回を目指す”挑戦者“のオールディーズ、そして迎え撃つ”王者“ファイブファールズ共にベストメンバーが揃った大会屈指のBIGGAMEは試合開始直後から両者互いに譲らない僅差の鬩ぎあいを続いていくも第3Q終盤、懸念されていた「アウトサイドシュート」の確率がやや下がったファイブファールズに対しオールディーズがじわじわとリードを拡げ45-39と6点のリードで始まった第4Q、このまま引き下がる訳にはいかないファイブファールズが王者の意地を見せて反転攻勢、43-45と2点差にまで肉薄、射程距離内に照準を合わせたと思われたがここで痛恨のターンオーバーを犯しオールディーズを捉える機会を逃してしまう・・・ −するとファイブファールズのメンバーの視線が下がり緊張の糸が一瞬緩んだほんの僅かな心の隙を見逃さず− オールディーズが圧巻の波状攻撃で一気に突き放し68-49で快勝、4戦全勝とほぼ栄冠を手中に収めると続いて行われたネオクラゲ戦でも序盤から優勢に試合を進め55-39で危なげなく勝利、5戦全勝の完全優勝で見事王座に返り咲いた。
これまでの彼らの戦いぶりをもう一度振り返って考えてみると −キングサンズ戦、セガ戦、ブッダ戦そしてネオクラゲ戦・・・試合開始から対戦相手を圧倒する言わば“先制攻撃”が彼らの基本スタイルとなっているがファイブファールズ戦で見せたように僅差の勝負になっても慌てることのない粘り強い精神力、最終Qで一気に突き放す圧倒的なオフェンス力、そしてプレーヤーに“自由”を与えないタイトなディフェンス力をも兼ね備えている。
次に【表2】の各主要部門平均チームスタッツの数値からさらに彼らの戦力の解析を進めていくことにしよう。圧倒的な強さで優勝を飾っただけに全ての部門で文句のつけどころが無い素晴らしい数値が並んでいる。特筆すべきは平均得点65.4P 、そして平均失点43.4Pは共に断トツのリーグトップのスコアを記録、さらにその得失点差は実に+22.0は全ての試合で二桁差を付けての完勝での優勝を証明、彼らに続く平均得点60.2Pで2位のブッダは5.2Pの、平均失点52.6Pで2位のファイブファールズには9.2Pの大差を付けていた事を考えれば彼らが「リーグ史上最強」、あるいは「異次元の強さ」と揶揄される程大会を通して如何に優れたパフォーマンスを発揮していた事がおわかりだろう。
最後に【表3】の各部門スタッツリーダーを確認してみよう。するとどうだろう・・・他チームとは明らかに異なる事象が見えてくる・・・他チームでは往々にして”エース”あるいは“中軸選手”と呼ばれるプレーヤーが複数の部門でトップに名前を連ねているのとは異なりオールディーズでは各部門に於いて全て異なるメンバーの名前が並んでいる・・・
これは彼らが“才能豊かなスペシャルな選手に多くの事柄を依存する”のではなく、 −参考までに準優勝に輝いたブッダのファイナルアンサーりょうは5部門中、4部門で、同じく3位のファイブファールズのトリックスターだいごは3部門でトップに名を連ねている・・・− メンバー全員が“心を一つにして”チームで決められた約束事の遵守や戦術を共有すると同時に選手各々が持つ能力や個性を最大限に引き出しながら託された責務をフロアの上やベンチで、あるいは数値には表れない、対戦相手や我々の眼には映らない部分をも含めて遂行したことを窺い知ることが出来る。またチームには複数のポジションを高いレベルでこなせる選手が複数在籍している為、「スターターが1名、もしくは2名が欠ける」状況に陥ろうともさほど戦力の低下を招く事は考えにくく、前述の様々な分析を重ねても現状では彼らの死角や付け入る隙は見当たらない。
それでは最後に連覇を目指すチャンピオンチームの顔ぶれを確認していこう。 以前のようにその高い得点能力をチームから求められていた当時の攻撃的なポジションよりは少し後方で −サッカーに例えれば“ボランチ”のようなポジショニングでチームのバランスを保ちながらゲームコントロールの役割を担うスーパースター、ミスターパーフェクト遠藤、美しいシュートフォームから高確率のミドルショットを量産するリーグを代表するクイックリリースシューター、バイロン鈴木、身体を張ったハードなディフェンスとこれまで幾度もチームを勝利に導くビッグショットを決めてきたクラッチシューター、ベイビーガソル三寺、力強いパワープレーと正確なミドルジャンパーが武器のミリオンダラー浅田、ハードなトレーニングによって培われたパワープレーを織り交ぜたストリートテイスト溢れるアグレシップなプレイでアクセントを与えるチームの“必要悪”キャノンボール“diaboro”しん、前回大会、いい意味で期待を裏切る大活躍を披露、“限界説”を吹き飛ばしてみせたベテラン、スワン佐々木、前回大会見事MVPに選出されたオールラウンダー、ヒュードロクーペ荒井、膝靭帯断裂の回復具合が懸念されるものの独特の嗅覚でリバウンドを?ぎ取りチームを支えるキケロ武田、ここのところミドルジャンパーの確率を飛躍的に向上させているバックアップポイントガードのイリーガルシート”the travelingmachine“鹿野、前回大会最終ゲームのネオクラゲ戦、左ベースライン沿いから巧妙なフェイクモーションでディフェンダーを交わし見事なステップバックショットを決めてみせた「決して進化の歩みを止めようとはしない」ヴィーナス“no limit”野崎、短いプレイタイムの中「リーグno.1とも言われるスピンの効いたシュート」で得点を量産するブラックキャットからa.k.a変更、スピンマスターさくら、そして前回大会は残念ながら欠場したペイントゾーンの職人、BIGX西川、決して大きくはない身体でディフェンスに奮闘、チームにエネルギーを齎すピースメーカー石渡のベテラン2人を加えた13人体制で連覇を目指して大会に挑んでくるだろう。
先にも述べてきたようにその戦いぶりやあらゆる数値を解析してみても大きな死角や付け入る隙は見当たらず今大会でも彼等が優勝に最も近い位置にポジションを取っていることは間違いない。唯一の懸念材料を上げるとすればそれは主力メンバーの多くが30代後半から40代に差し掛かっている年齢的に下降線に入る体力的な問題だ。次期大会のスケジュールを見ると最終日の第2試合に予定されているファイブファールズ、そして最終第5試合で激突するブッダとの“彼等をその座から引きずり降ろさんと爪を研いでいる”強豪2チームとのダブルヘッダーを如何にして乗り切る事が出来るかが大会連覇への大きなカギとなるだろう。
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